Informationインフォメーション

どの娘がお墓をみる?-ジェンダーの視点から「慣習・慣行」を考える

webサイト・いたみん(伊丹市ポータルサイト)9月号

「男と女の「おかしな!?」ハナシ」にコメントを寄せさせていただきました。

今回のテーマは、「どの娘がお墓をみる?」です。

 https://itami-city.jp/mp/okashina_hanashi_hyogo/?sid=64879

 

【コメント部分】

今回の「つぶやき」は、お墓を継ぐのは「姉・妹なら、年長者(姉)であるべき」「そもそもお墓はその形のままで引き継いでいなかければならない」など、私たちが、お墓に対して、自由な想いや考えによるのではなく、まだまだ、社会に根強く残る慣行や慣習に縛られがちであることを示すエピソードでした。

特に私たちのまわりでは、いまでも、お墓は長男(男性)が相続する(引き継ぐ)べきであるとか、お葬式にあたっては女性をなるべく喪主にしないといった慣行などがやはり根強いのではないでしょうか。これは、戦後、日本国憲法が施行され男女平等になったように見えて、社会全体が、まだまだ、女性に対して合理的な理由もなく一人前ではないかのような扱いをすることを許容し、当然視していることの現れだともいえるでしょう。

日本は、1985年に「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以下、「女性差別撤廃条約」といいます)を締結し、世界に対し、女性に対するあらゆる差別を撤廃するための措置をとることを約束しました。

この女性差別撤廃条約の第2条(f)に、社会に存在する女性に対する差別となる「慣習や慣行」を禁止しようとの規定があります。ここでいう慣習・慣行とは、たとえば、日本には女性の立ち入りが禁止されている(女人禁制の)山がいまだ残っていることや、平成30年4月に宝塚市で行われた相撲の地方巡業において女性の市長が土俵上で挨拶することができなかった問題などがあげられます。そしてまさに、今回のテーマであるお墓の引継ぎをめぐる長男(男性)優先の考え方も、この慣習・慣行の一つなのです。

奇しくも、大都市を中心にもはや新しく墓地となる土地を供給することが難しくなってきたという現実的な問題もありますが、単身世帯の増加、人口減少、そして家族の多様化など、現代の私たちを取り巻く社会環境も変化しています。これまでは変化を加えることがタブー視されてきた「お墓」という問題について、語り、語られる場が少しずつ増えてきたように思います。このような自由な発想や着眼は、固定化した古くからの考え、しきたりに風穴を開けるという意味で好ましいことです。

そして先に触れました女性差別撤廃条約の趣旨に鑑みても、たとえば、この「お墓」というひとつの問題について、私たちが知らず知らずのうちに、女性であるから、男性であるからという視点で固定的な慣行や慣習に縛られている現状を積極的に変えていくことが、ひいては社会全体が女性差別の根絶という壮大なテーマに取り組むうえでも重要な一歩なのです。

今回の「つぶやき」はお墓に関してのものでしたが、この機会に、女性差別撤廃条約が、女性に対するあらゆる差別を根絶するために、「慣習や慣行」についても言及していることを<横から>お伝えしました。

〔N〕

  1. Information一覧に戻る

PAGE TOP