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「あなたは悪くない」に元気が出てーモラハラと離婚について考える

webサイト・いたみん(伊丹市ポータルサイト)5月号

「男と女の「おかしな!?」ハナシ」にコメントを寄せさせていただきました。

今回のテーマは、『「あなたは悪くない」に元気がでて』です。

https://itami-city.jp/mp/okashina_hanashi_hyogo/?sid=69857

 

【コメント部分】

 離婚のご相談を受けていて非常に多いのが、今回のテーマとなっている、モラルハラスメント、精神的なDV(ドメスティック・バイオレンス)がその原因、背景となっているケースです。これに、身体的な暴力や、家計費を渡さないといった経済的なDV等が加わっているケースもありますが、この、いわゆるモラハラに主に苦しんでいらっしゃる人が非常に多くいらっしゃることを、日々感じています。

 そして、離婚の問題は、その家族の置かれた環境、解決までの過程等、どれ一つとして同じものはありませんが、モラハラの具体的な表れ方には、多くの共通点があります。

 たとえば、今回のエピソードにも出てきた「誰のおかげでメシが食えていえると思っているのか」や、「おまえは頭が悪い」といった言葉等、人の尊厳を傷つけ、自己肯定感を下げられる言葉は、日常生活、家庭という閉じられた環境の中で、子どもたちの目の前であろうがなかろうが、四六時中、飛び交っています。若しくは、怒りのスイッチがどこで入るかわからず、突然、キレて大声で理不尽な言葉を並べ立てられるため、子どもたちと楽しく夕食を囲んでいても、DV加害の(例えば)父親が帰ってくる玄関の扉の開閉音が聞こえただけで、一瞬にしてその場の空気が変わり、緊張が走るというご家庭も非常に多くあります。

 また、異様なまでの行動の制限、監視も多く聞きます。必ず、その日の行先を事前に、そして事後に報告をしないといけないとか、LINEで「今どこにいるのか」と何度も確認の連絡が来るなど、一人の大人として、自由な意思をもって行動ができているとは到底言い難い状況に置かれている人がたくさんいらっしゃるのです。

 そうしたモラハラ等の被害に遭っている人たちは、そのいわば加害者による「支配」の構造の中で、すっかり感覚が麻痺をしてしまっているためなのか、第三者から見れば非常におかしな状況に置かれていることに気づかないままで長年を過ごしてきており、今回のエピソードのように、親や周囲の友人等から指摘をされて初めて気づいたという人にこれまでも多く会ってきました(若しくは、ご自分でも何となく気づきながら、気づかないふりをしてこられたのかもしれません)。

 そうした方々が共通しておっしゃるのが、いわゆるモラハラの被害について書かれた本や、モラハラ被害のチェックリストを読んだときに、その中に書かれていた具体的なモラハラ事例・態様が、「私の家の中を見られていたかのように、すべて当てはまっていて驚いた!」という言葉です。そして、そうしたほかの人の体験談に触れることで、悩んできたのは自分だけではなかったのだと初めて知り、勇気づけられたとの言葉を聴くこともあります。そういう意味では、ご自分のご家庭、夫婦間でモラハラを疑ったときに、そうした書籍等を読んでみることは有用だと思います。

 身体的に人を傷つけることももちろんあってはならないですが、人を人として尊重せず、その人の自己肯定感を下げ、生き方を否定し、制限するようなことを、誰であってもする権利はありません。まして、一番に尊敬しあい、支え合うはずの夫婦の間でそのようなことが行われることほど悲しく、苦しいことはありません。一度傷つき、無くなった信頼感を取り戻すことは難しいのです。「たかが言葉の問題」等ということはありえません。愛情や甘えの表現方法、裏返しだった、離婚等ありえないという加害配偶者たちの主張もたくさん見てきましたが、自分が傷つけてきた配偶者が一度離婚を決めたときには、もう取返しがつかないのだということを、できればそうした行動に出る前に、わかっていていただきたかったと思います。

 家庭内でこうしたモラハラが許される背景には、経済的な格差があるケース(たとえば、圧倒的な経済力の差があり、働く夫のモラハラを受け入れて生活をしていかざるを得なかった等)ももちろん多く見られます。しかしながら実は、経済的にほとんど格差がなくても、もしくはたとえば女性(妻)も男性(夫)と対等若しくはそれ以上に収入を得ていても、夫からひどいモラルハラスメントを受け続けているケースもあります。その背景には、「女性は夫に従うべき」といったジェンダー意識や、「子どもにとっては、父と母がそろっている家族でなければ可哀そう」といった家族観に「とらわれすぎている」ことを感じます。

 しかし、ほかでもない、自分自身の人生を大切にできない、自分の意思で行動し自分自身を輝かせることができない、そのような家庭や夫婦関係が本当の幸せでしょうか。成長の過程にある大切な我が子が、そのような環境に置き続けることが「『可哀そう』ではない」と言えるでしょうか。

 経済的な問題や、周囲の目、そしてほかでもない自分自身の価値観を乗り越えていくことは骨が折れ、理想だけでは語れないことも確かです。

 しかしながら、モラハラを経て離婚という重い選択を決意し、実行に移した人たちが(そしてその子どもたちが)、目に見えて明るさと自信を取り戻していく様子を、多く見てきました。そうした経験から言えることは、「あなたの決断・勇気は尊く、そして、あなたが受けてきた配偶者の言動は、まさしくあなたやあなたの大切な子どもたちを傷つける暴力であり、許されない。」「あなたは悪くない。」ということです。

 

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 今般の新型コロナウィルス感染症拡大に、不安な日々を過ごされている皆様にお見舞い申し上げます。

「Stay Home」(家で過ごそう)が推奨される中、家庭内での夫婦間の暴力や子どもへの暴力が、世界的にも、そして国内でも、大変問題とされ、危惧されています。通常以上に皆さんのストレスが高まっており、夫婦間、親子間のモラハラを含めた様々な暴力が起こりやすく、また、それらが隠蔽されやすい状況にあるともいえます。

 このようなときにこそ、勇気を持って、しかるべき相談機関・窓口への相談等をお願いします。それが他でもないご自身や、大切なご家族の安全、安心、命を守ることにつながるのです。                     

 

〔N〕

 

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