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暴力への「気づき」と、新しい道を歩き始める「勇気」を

丹波市男女共同参画センター情報紙Vol.3(令和2年5月号)に

寄稿をさせていただきました。

https://www.city.tamba.lg.jp/uploaded/attachment/49236.pdf

 

以下、寄稿部分を抜粋させていただきます。

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新型コロナウィルス感染症の感染拡大に、不安な日々を過ごされている皆様にお見舞い申し上げます。

「Stay Home」(家の中で過ごそう)が推奨される一方で、家庭内、家族間での暴力、ドメスティック・バイオレンス(DV)が増えています。外出の自粛だけではなく、収入の減少や失業の不安等から来るストレスに誰もがさらされるなか、家庭という「密室」の中で、以前にも増して配偶者や子どもたちへの暴力・暴言が増えていることを、非常に危惧しています。「家庭」が必ずしも、誰にとっても安全・安心な場所ではないことを、改めて感じる毎日です。

家庭内のDVには、殴る、蹴るといった『身体的な暴力』だけではなく、大声で怒鳴る、「誰のおかげで生活ができていると思っているんだ」といった心無い言葉で相手を傷つけるといった『精神的な暴力』、生活費を渡さないといった『経済的な暴力』、嫌がる性的行為の強要等の『性的な暴力』、日常生活の行動を監視・監督する『社会的隔離(DV)』等、様々な形を伴います。また、こうした夫婦間の暴力を目撃する子どもたちへの深刻な影響(『面前DV』)も大きな問題です。

家庭内の問題は家の恥であるとか、周囲の人からは普通の人(むしろとても良い人)だと思われている配偶者が「実は暴力をふるう人だ」等と言っても誰にも信じてもらえないだろうと思い、ただじっと我慢をして暴力が行き過ぎるのを待ち続けるDV被害者も多くいらっしゃいます。この「行き過ぎるのを待つ」ことが出来てしまう背景には、DVの場合、加害者からの激しい暴力の時間もあれば、その後に加害者から被害者への暴力に対する謝罪と過剰な愛情表現が示される場合も多く見られるためです(いわゆる「DVサイクル」)。

このような家庭内の暴力で、どうしても被害を受けやすいのが、家庭内・夫婦間で立場の弱い女性(妻)です(立場の弱さは、経済的依存や固定観念等が起因しているものと考えられます)。

たとえば平成30年度に兵庫県内17か所(当時)の配偶者暴力相談支援センターで受けたDV相談件数8,489件中、女性からの相談件数は8,386件であり、全体の98.7%を占めます(内閣府資料より)。

弁護士として、家庭内での配偶者からの暴力に悩み、傷つき、苦しみ抜いてきた多くの女性たちと出会います。そしてほとんどの女性たちの共通点として、①自分が受けている被害を、当初は、DV、暴力であるととらえることがなかった、気づかなかった、②自分さえ我慢をすればよいと思った、我慢しなければいけないと思った、ということがあげられます。加害者だけではなく、被害を受けている女性たちまでもが、「家族」や「性別役割分担意識」の呪縛にとらわれていることを強く感じます。

しかしながら、誰もが、かけがえのない、その人自身の人生を歩んでいく権利を持っています。家庭・家族の中で、信頼しあえるパートナーと自分の人生を輝かせながら歩むことができれば、それはひとつの幸せな形でしょう。しかし、決してそれだけが人生の形ではありません。「あるべき形」にとらわれすぎて、自分や大切な子どもたちの安全や健康を害するような状況になっていれば、迷わず、誰かに相談をし、そして、新しい道を歩き始める勇気を持っていただきたいと思います。

家庭内の暴力から解き放たれ、気づきと勇気を得た女性たちが、表情に明るさを増し、自分の行動に自信を持ち、颯爽と変化していく姿を数多く見てきました。

この新しく開設された丹波市男女共同参画センターが、あなたの「気づき」と「勇気」を得る大切な場所の一つになることを、心から期待しています。

 

〔N〕

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