配偶者、パートナーとの関係性に悩んでいませんか?
身近にあるDVについて、知ってください。
気づいてください。
DVは親密なパートナー・関係性の中で起こります。男女間だけでなく、同性パートナー間でも起こりますし、親しい関係にある子どもたちや若者の間でも起こります。そして、家族、より親密で継続的な関係性を結ぶ夫婦関係の中で、広く起こりうる、そして現実に起こっている暴力といえるでしょう。
夫婦間でのDVについて、統計上、女性が被害者となることが多く、生命の危険を伴う場合が男性に比べて顕著であることが知られています。
たとえば、婚姻歴のある女性の約4人に1人(25・9%)、男性の約5人に1人(18.4%)は配偶者から何等かの暴力被害を受けたことがありますが、そのうち女性の約10人に1人(10.3%)はそうした暴力被害を何度も受けています(男性は4.0%)。
そして被害を受けたことのある女性のうち、約5人に1人(18.2%)は『命の危険』を感じた経験があるのです(男性では、約20人に1人(5.0%))
(以上、内閣府「令和2年実施男女間における暴力に関する調査(R3.3)」より)。
ほかにも次のような数字で、DVによる女性の被害状況を知ることができます。

「そんなにひどい暴力を受けているならなぜ今まで逃げようとしなかったのか」と周りにいる人たちは言うかもしれません。
しかしDVから逃げることは決して簡単ではありません。さらには、本人でさえDVに気づいていないということもよくあるのです。
なんだか日ごろのパートナーとの関係がおかしいなと思い、友人にすこし話をしてみたら「あなた、それってDVだよ」と初めて指摘された人。
動悸がする、眠れないなと思い、心療内科を受診してみたら、医師から家庭生活について質問され、長時間に渡る説教や暴言を吐かれたりしたことを話すと、「DV」の可能性を指摘され、私がパートナーを怒らせたからしょうがないと思っていたけれど、暴力だったんだとご本人がようやく気づくことは珍しくありません。
また、中には、身体中にパートナーから受けた暴力によるあざがあっても、他人に指摘されるまで、ご本人は疑問を抱くことがなかったというケースさえあります。
また女性たちは、DVに気づいた後、別れたくても、逃げだすのに躊躇(ちゅうちょ)する理由もたくさんあります。
たとえば内閣府の令和2年実施調査(先述)によると、子どもがいるから(妊娠したから)・子どものことを考えたからという割合が68.9%。経済的な不安があったからという割合が41.0%ありました。そのほかにも、相手が変わってくれるかもしれないと思った、これ以上は繰り返されないと思った、相手が別れることに同意しなかった、相手には自分が必要だと思った、仕返しが怖かった、周囲の人から別れることに反対されたなど、様々な理由から女性たちがDVという環境の中に閉じ込められ、抜け出すことが難しいという状況に陥っていることがわかります。
別居や離婚後も、DV加害者のつきまといや嫌がらせが続く場合が多いです。
たとえば、平成19年の内閣府調査(「配偶者からの暴力の被害者の自立支援等に関する調査」)では、約1/3ものケースでつきまとい等があるとの調査結果が見られました。
実際に痛ましい事件等も報道されています。
2021年10月には、夫が、協議離婚後、自宅に届いた郵便物等から知った元妻の居住場所を確認しに行く等していたところ、元妻の幸せそうなツイッター投稿に腹立たしさを募らせ、楽しそうにしているチャットの発言への怒りから殺害を決意。牛刀等を用意して待ち伏せ、殺害に及んだ件もありました。また、婚姻中に身体的DVがあり、離婚してから7年後に探し出されて襲撃された例(一時期、意識不明の重体)も聴かれています。離れることができたから、別れることができたから安心というものでもないことが、DVの特徴ともいえます。
そして、DVから逃れたくても、その後の経済的な困窮を危惧して、離れて暮らす決断ができないDV被害者も多く見られます。
たとえば、先の内閣府「配偶者からの暴力の被害者の自立支援等に関する調査」によると、配偶者と離れた後の、未成年の子どもを持つDV被害者のほとんどが子どもとともに暮らし、DV被害者の6割が公的施設・民間シェルターで生活をしています。そして3人に2人が月収15万円以下で生活をしているという実態があり(平均12万6000円)、母子家庭の貧困は社会的な問題となっています。
DVが発生する関係性は、婚姻をしている配偶者間だけでなく、婚姻届出をしていないいわゆる「事実婚」のカップルを含みます。また被害者は男性、女性の別を問いません。さらに、婚姻中だけでなく離婚後(事実婚の方が事実上離婚したと同様の事情に入ることを含む)に引き続き暴力を受ける場合も含まれます。
そして、こうした本来親しい人(カップル同士)の関係性の中で見られるDVは、同性カップル間、そして、小中高校、大学生等、子どもたち・青少年期であっても起こり得ます(いわゆる「デートDV」)。
また、子どもたちの目の前で起きるDV、夫婦喧嘩は「面前DV」(心理的虐待)として、児童虐待防止法上の「児童虐待」に当たります。子どもたちの目の前でDVが繰り広げられることは、子どもの福祉、子どもの健全な発育に影響があること(たとえば脳の発達を阻害するリスク等)が知られているところです。
国際的な社会問題の文脈では、「親密なパートナーによる女性への暴力」の問題として位置づけられています。
国連では、女子差別撤廃条約が1979年に国連総会で採択され、1981年に発効しました(日本は1985年に締結)。この条約が採択された時代は、まだDVは「個人的な問題」として捉えられ、条約や法律で規定・規制すべきものとは考えられていませんでした。このため、同条約にはDVを具体的に禁止するような規定はありませんでした。しかしその後、「個人的な問題」は「社会的な問題」であるとして、DVについても認識されるようになり、1993年の国連総会では「女性に対するあらゆる形態の暴力の撤廃に関する宣言」がなされました。そして、2001(平成13)年には、日本でDV防止法が成立し、その後改正が重ねられています。
2001年に成立し、その後改正がなされている日本国内におけるDV防止法「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」上のDVの定義は次の通りです(これまでの複数回にわたる改正で適用範囲の拡大等がなされました)。
婚姻、事実婚、同棲(生活の本拠をともにする関係にある交際、婚姻関係における共同生活に類する共同生活を営んでいないものを除く)の相手及びそれらの関係にあった相手からの「暴力」(※DV防止法上、保護命令の対象となる狭義のDV概念と、それ以外の広義のDV概念があります)
(狭義)身体に対する暴力又は生命・身体・自由・名誉、若しくは財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫
(広義)身体に対する暴力やこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動(精神的・性的暴力等)
DVは 「力(パワー)による支配(コントロール)」構造です。
たとえば結婚をした男女の間でのDV構造として、ひとつのよく見られるケース(被害被害届が女性の場合)を示すと次のような仕組みが見られます。
加害者の特徴として、例えば次のようなものが見られます。
こうした加害者の特徴が故に、被害者がより自己肯定感を下げ、外には相談しづらい状況を作り出している場合もあるのです。
【ハネムーン期 → 緊張形成期 → 爆発期 → ハネムーン期 ・・・】の循環が、しばしば見られます。
精神科臨床医の小西聖子さんによると、親しい人からの DV により「長期にわたり繰り返し被害が起こると、PTSD の症状に加えて、慢性的な抑うつ症状、慢性的な解離症状、疼痛を含む多彩な身体症状、対人関係の不調、自殺念慮や自殺企図、不安定な感情、物質乱用などが症状として現れ、自己評価が極端に低下」してしまいます。(小西聖子(精神科臨床医)「ドメスティック・バイオレンス」p146)

うつ、不安障害、PTSD,解離性障害等の精神障害ストレス由来の疾病など

夫婦間の激しい言い争い、暴力等を直接、間接に同居する子どもたちが見聞きすることは、子どもたちにもその心身へ大きなダメージを与えます。
このような場合、被害者は子どもたちに与える影響を最小限にとどめたいと思いますが、加害者はそのことを利用してさらなる DV により、被害者をコントロールし続けるというケースもよく見受けられます(面前 DV)。
家庭内で弱く、力のない子どもたちは時に、加害者の第二、第三の支配の対象として、格好の攻撃対象になることもあります。
こうした面前 DV や子どもたちへの直接の攻撃は、児童虐待としても位置付けられています。
このような子どもたちは、安全の感覚が持てず、いつも怯え・緊張を強いられています。その場合、成長が止まったり、退行が起きることもあります。具体的には、「後天的発達障害(不安定で破壊的な情報処理回路の形成・強化)」「怒り、抑うつ、集中力・感情抑制が効かない、学習困難等」「力により歪められた環境への適応、愛着形成の不全」が生じる可能性があるほか、さらには「外傷性の絆」「暴力で決着する言動への寛容性」などが見られる場合もあります。
DV のある家庭内では、支配を行う「加害者」中心の人間関係が形成されます。
他の家族は、それぞれ恐怖とストレスにさらされ、相互に怒りと不信を抱え、孤立しやすくなります。
また時には、加害者が被害者(パートナー)の実家家族を味方に引き入れてしまい(いわば支配・コントロールしてしまい)、被害者を実家からさえ引き離すことも見られます。これにより被害者はさらに、精神的・経済的にも孤立・孤独感を深める結果になります。
被害者は、身体的な傷を受けることにより、同時に、深く精神的・心理的な被害を受けます。
そうした心理的被害は、身体的暴力を受けなくなり、さらには加害者との物理的な距離ができた後であっても、中長期的に、被害者の健康・発達・社会関係形成において大きな影響、打撃を与え続けます。
「殴られるだけがDVではない」と言われる所以(ゆえん)です。
未成年子がいるカップルが離婚する場合、これまではどちらか一人を親権者として選ぶ必要があったところ(単独親権)、2026年4月1日施行される改正民法により、離婚後、単独親権とするのか、それとも両親双方が共同で親権者となるのかを選ぶことができるようになりました(いわゆる「離婚後共同親権」の導入)。
しかし、これまで見てきたようにDVによる支配関係がある場合はもちろん、高葛藤ケースにおいては、離婚したからといって、子どものために「対等」な「協力」関係を築くことは困難ですし、むしろ、離婚後も共同親権を通じた支配の継続が懸念されます。
このため、DVやそれに類する事象が存在する場合には、子どもの親権、監護権について、今まで以上に慎重な判断、検討が必要です。
相談先の相談員の皆さんは守秘義務や、DV 防止法上の職務関係者の配慮義務を負っています。
日頃からDVの構造や被害者の特徴、状況等を理解するための研鑽を積んでいる人たちです。
どうぞ安心してご自身のこれまでのこと、それからこれから望むことなどをお話してください。
そして、私たち弁護士も、もちろん、その一人です!安心してお話してください。
夫婦間でDV、権力勾配(権力格差)がある場合、別居や離婚に関することを対応に話し合って決めるということは極めて困難です。
加害者は、家父長的価値観や男女差別的な思想に親和的なタイプが多く、これまで暴力や心理的虐待、経済力等を手段として被害者を支配(コントロール)してきたことから、被害者がその関係性から逃れようとすると大変な苛立ちと焦りを感じ、別居や離婚を阻止しようと必死になります。
このため、別離や離婚というのはDV事件で最も危険性が高まる場面の一つであり、安全に別居した後も、勤務先や転居先付近を徘徊されたり、子どもが通う学校や塾に押しかけられたりし、被害者の生命や身体が危険にさらされることが珍しくありません。もし、あなたが同居中にDVを受けた経験がある場合、別居に先立ってDVに詳しい支援者や弁護士らに相談し、保護命令の申し立てを行うかどうか慎重に検討するのがいいでしょう。
保護命令は、被害者の安全を守るための制度であり、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、「DV防止法」といいます。)に規定されています。
保護命令には大きく分けて接近禁止命令と退去命令があります。さらに接近禁止命令には、被害者に対する接近禁止命令だけでなく、同居する子どもへの接近禁止命令、親族等への接近禁止命令、電話等の禁止命令があります。
保護命令を発令してもらうためには、以下の要件を満たす必要があります。
※ 「心(精神)への重大な危害」として、うつ病、心的外傷後ストレス障がい(PTSD)、適応障がい、不安障がい、身体化障がい等があります。
迅速な裁判の観点から、申立の際、うつ病等についての医師の診断書を添付することが必要です。
保護命令を申し立てる場合、加害者の住所の所在地やDVが行われた場所等を管轄する地方裁判所に保護命令の申し立てを書面で行う必要があります。申し立てる際のポイントについて、以下、説明します。
加害者から暴力をふるわれたり、傷害を負わされた場合、被害者として保護命令の発令を求める以外に、被害届の提出や告訴をしたり、ストーカー行為規制法に基づいて警察に取り締まってもらう方法もあります。

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