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男性9割が決定する政治に「待った!」ー「女性割合」の意義を考える

webサイト・いたみん(伊丹市ポータルサイト)2018.7月号

「男と女の「おかしな!?」ハナシ」にコメントを寄せさせていただきました。

今回のテーマは、「男性9割が決定する政治に「待った!」」です。

https://itami-city.jp/mp/okashina_hanashi_hyogo/?sid=64185

 

【コメント部分】

「ジェンダー・ギャップ指数」は、各国における男女格差を図るものとして、経済・教育・政治・保健の4分野のデータを基に毎年作成され、各国のランキングとして発表されます(世界経済フォーラム)。北欧の国々が例年上位を占めるこのランキングですが、

日本はと言えば・・144か国中114位(2017年)。しかも、年々順位を下げています。その大きな要因のひとつとして、この「政治」分野での取り組み(女性の政治への参画)の低さがあります。

なぜ、女性の政治参画が必要なのか。

単純に考えても、この社会は女性と男性がほぼ同割合で存在しています。ですから、その社会の構成員すべてにかかわる事柄、ルールを決める立場の人たちも、女性、男性が同じ割合であることが、まさに民主的なのだと言えます。そしてもちろん、女性として生まれ、生活をしてきた様々な経験(その中には、ジェンダーバイアスに基づく体験もあることでしょう)が政策に反映されることは、多様な価値観を認める社会づくり(それは女性だけではなく、男性にとっても、誰にとっても生きやすい社会だと思います)のために大いに必要だと言えるでしょう。

このたび日本で「政治分野における男女共同参画推進法」(候補者男女均等法)が成立したことは、こうした政治分野での女性参画を推し進め、日本における男女格差を縮める第一歩となることでしょう。

ただし、法律が出来ただけでは何も始まりません。強制力がないこの法律に基づいて各政党がどれだけ取り組む意欲があり、実際にどのような変化がもたらされたのかが問われます。諸外国では、政治への女性の参画に向けたより強力な取り組みとして、クォータ制(割り当て)等も導入されています。こうした女性の政治参画の意義への理解とともに、今回成立した法律の実効性や、さらなる有効な法制度の在り方などを私たちは引き続き検証し、議論をしていく必要があります。

また、政治だけではなく、たとえば司法における女性の参画、ジェンダー平等も、中立・公正な裁判や人権保障の実現という観点からも必要です。司法分野における女性の参画を数字で見ると、裁判官の女性割合は20.7%、検察官の女性割合は22.9%、弁護士の女性割合は18.3%です(内閣府「男女共同参画白書平成29年版」より)。たとえば、性犯罪の捜査の現場で言えば、被害女性への聞き取り等に関しては女性の検察官の役割が大きいですし、女性の相談者は女性の弁護士のほうが話をしやすいというニーズもよく聴かれます。それを考えると、この数字は「司法へのアクセス」の良さを考えたとき、まだ十分なものとは言えません。

さらにそれだけではなく、たとえば裁判所における判断(判決)を見ても、真に公平・中立な裁判を追求するのであれば、女性として生活をしてきた中で培ってきた多様な経験、実感が反映されるべき場面もあるように思います。

たとえば、2015年12月に最高裁判所大法廷において、『夫婦は同一の氏とする』という民法の規定を「合憲」とした判決がありました。これは、結婚によりどちらかの氏を選択することになる現行の制度がゆえに、氏を変えざるを得なかった人(主に女性)たちが始めた裁判でした。最高裁の多数意見は、同制度を合憲としましたが、当時大法廷を構成していた15人中3人の女性の裁判官は、その全員が、この民法の規定が憲法24条に違反するとの意見を述べました。この意見を詳細に読むと、女性の裁判官自身のこれまでの生活体験に裏付けられた言葉で書かれており、多数意見にはない説得力がありました。当事者の思いをくみ取ったうえで適切な事実認定や法的な判断を行うことが裁判官には求められます。そしてこの当事者の思いを真にくみ取るためには、想像力・共感力はもちろんのこと、やはりその裁判官の生活体験からくる実感も大切なのではないでしょうか。もしも、この大法廷の構成メンバーが違っていたら?女性割合が異なっていたら?この最高裁判決の結論は変わっていたかもしれません。

このように考えていくと、政治であっても、司法であっても、あらゆる分野で女性の割合が増えることは、これまで「あたりまえ」と思っていた考えや制度を大きく変えるための、大切な第一歩になる可能性を秘めていると言えるでしょう。

〔N〕

 

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