長い期間にわたりドメスティック・バイオレンス(DV)を受けていた妻(女性 40代)が、子どもたちを連れての別居を決意した事例。調停手続き等の裁判手続きを経て、母子にとって離婚後の生活が安心することができる環境が整いました。【婚姻費用、財産分与、面会交流】
ケース内容
依頼者 女性40代
相手方 男性40代
依頼者である妻は、夫からのDV(身体的、精神的等)を理由に離婚を希望。 相手方は、夫婦と子どもたちとの生活を望み、また妻へのDVの事実について争うケース。
弁護士が関与して解決するまでの道のり
依頼者様は、夫からの長年にわたる身体的、精神的な暴力を含む、あらゆるDVを理由に、子どもたちを連れ別居をした段階で、離婚を決意し弁護士に依頼されました。
当初、離婚と婚姻費用の分担を求める調停を申し立てましたが、相手方は離婚原因であるDVの事実について激しく争うとともに、妻に対し、監護者指定と面会交流の調停を申し立てました。弁護士は、代理人として調停期日に同席し、依頼者様が調停委員等に話をする際、うまく話しができない場合や話すべきポイントを忘れてしまっている場合等につき、サポートをしました。また、期日間に夫と子どもたちの試行的面会交流が行われることになり、日程調整等を行いました。
その後、離婚については調停が不成立となり、訴訟を提起しました。婚姻費用、面会交流(監護者指定)については、調停等で話し合いが続けられました。別居期間中の婚姻費用については双方の収入資料等をもとに金額が決まりました。また面会交流については、直接的な交流を求める夫と、居所を隠し生活をしており夫への恐怖心が強い妻とで折り合いがつかず話し合いは難航しましたが、離婚訴訟中については、定期的に子どもたちの様子を妻から夫に報告すること(弁護士を介して)などの内容で、調停は成立しました。
離婚訴訟においては、弁護士は代理人として、写真や当時の日記等の証拠を整理し主張書面とあわせて裁判所へ提出し、各期日に出席をし、都度依頼者様と打ち合わせを重ねました。また尋問に先立つ陳述書の作成、尋問のための準備等を依頼者様と行いました。
尋問が終わった時点で、当初の離婚調停申し立てから3年以上の月日が経っていました。依頼者様としては、裁判が続くことの精神的負担、お子様たちへの影響等を考えた上で、訴訟では判断を求めることができない将来の面会交流の約束を含めた早期の解決を望んでおられましたので、和解での解決の途を探りました。父親と子どもたちの試行的面会交流を双方代理人立ち合いのもと、複数回行うことができたこともあり、相手方も和解での解決に前向きになりました。
弁護士は、依頼者様のご希望を踏まえた和解条項案を整え、期日間に、相手方代理人と交渉を進め、無事、和解にて離婚をすることができました。
得られた成果
長年にわたるDVによる影響で、依頼者様は、調停当初はもちろんのこと、裁判継続中に至るまで非常に精神的に不安な状況でした。弁護士が代理人として調停に同行をしたり、相手方(代理人)との交渉を引き受けることで、精神的なご負担は軽くなったと思われます。
面会交流については、依頼者様がDVによる被害を受けていることを、調停、審判の場を通じて、資料等を含めて説得的に主張をし、調停委員、審判官(裁判官)の理解を得る努力をした結果、裁判官から、離婚が成立するまでの期間について、とりあえずは間接的な交流にとどめてはどうかという調停案を出していただくことができ、相手方もこれに応じる結果となりました。
離婚は調停から訴訟での手続きを経て和解にて成立しました。訴訟では、訴状に記載した「請求の趣旨」の範囲内でしか裁判官は判決を書くことができませんが、和解では、訴状に記載していない事柄についても双方の合意があれば、その内容に含めることができます。本件では、離婚をすることはもちろん依頼者様の主目的でしたが、一方で未だ面会交流については、離婚成立までの間接的な交流の取り決めしかありませんでした。そのため、依頼者様としては、この機会に同時に、将来的な面会交流の方法を具体的に合意できることにも非常に重要な意味がありました。そこで、双方代理人弁護士が詳細に面会交流の具体的方法を含む和解条項案を早急に交渉し、話し合えたことは成果であったといえます。なお、同和解では、一部財産分与についての条項も盛り込み、経済的な成果も得ることができました。
本ケースのポイント
離婚等の調停手続きでは、弁護士が代理人として就任をしていても、原則当時者本人の出席が求められます。これは、本人の口から調停委員に話をすることが、事案の本質を伝えることになり問題解決に資するためです。しかしながら、多くの皆さんにとって、調停というのは初めての経験ですし、特にDVの被害を受けた方にとって、その体験を語ることはフラッシュバックをおこしてしまうこともあるほど精神的なご負担が大きなものです。弁護士は、あらかじめ依頼者様と打ち合わせ等を通じて婚姻(同居)時の事情を理解し、調停委員に伝えるべきポイントを確認していますので、代理人として調停期日に同席をし、依頼者様が調停委員にスムーズに話ができないときなどには、フォローをしたり代弁をしたりすることができます。
離婚等の訴訟手続きでは、調停とは異なり、主張と、それを裏付ける効果的な証拠の提出が必要となります。裁判官の心証を形成するこれらの作業については専門家である弁護士が長けている部分であり、代理人としてご依頼いただくのがおそらくご本人にとって有利に働くものと考えられます。また、相手方の主張に効果的な反論をする書面を作成していく必要があり、この点でも弁護士が代理人として活動することに意味のあるところです。
法廷での当事者尋問も、おそらく皆さまにとっては初めての経験で緊張もされることと思います。弁護士はあらかじめ尋問についてのイメージを依頼者様にお伝えし、ご一緒に尋問のための必要な準備を十分に行いますので、当日は、ご負担も少なく尋問に臨んでいただけるものと思います。
本件では、先にも書きましたが、和解という結果により、ご依頼者様にとっては訴状に記載した以上の結果(面会交流、財産分与)を得ることができました。これらは、依頼者様と密に打ち合わせを重ね、弁護士から訴訟の見通しとご本人の希望に鑑みて様々な選択肢をご提示するなかで、最終的には依頼者様ご本人が、最善の途を選びとられた結果だと思います。
なお、3年以上の長きにわたり、相手方に対し居所を隠して裁判手続きを進めることが可能であったのも、弁護士が代理人として活動をし、依頼者様の窓口となったことがあげられるかもしれません。弁護士は、情報の秘匿に細心の注意を払い、依頼者様の安全、安心についても関係諸機関と連携して配慮してまいります。