- 2021.01.15
- ジェンダー
DVの相談をしたいのですが・・・自分自身の加害性に向き合って
webサイト・いたみん(伊丹市ポータルサイト)
「男と女の「おかしな!?」ハナシ」にコメントを寄せさせていただきました。
今回のテーマは、『DVの相談をしたいのですが・・・』です。
https://itami-city.jp/mp/okashina_hanashi_hyogo/?sid=71033
【コメント部分】
私がこれまで「DV(ドメスティック・バイオレンス)」に関連する法律問題としてご相談を受ける場面(相談者)としては、たとえば、DV防止法の保護命令を受けたいと考える人や、離婚における離婚理由や慰謝料請求の根拠として配偶者からのDV被害を訴える人等、その多くはDV被害を「受けた」方々でした。法律を手段としてご自身の権利・利益を守りたい人からのご相談が多い中では、それらの権利・利益を守る法律が整備されている状況において、どうしても「被害者」側の視点からその保護の在り方が語られることが通常となります。その意味で、公的な機関である配偶者暴力相談支援センター(いわゆるDVセンター)等は、被害者保護のために設置されている機関ですから、これまで、被害者に特化して支援をしてきたのだと言えるでしょう。
しかしながら、被害者がいれば、他方で「加害者」が当然存在します。
そしてその「加害者」なりにDVをしてしまう理由、背景、そして反省を含めた今後の処し方について話をする場面もよく見聞きします。
たとえば離婚事件において、DVの暴力・暴言を日常的に行っていた配偶者が、離婚をつきつけられた際に、自分は加害者であったけれども、「自分の行動がDVとは気づかなかった」「自分の親も同じようにしていたから」とか、「今回のことでとても反省し、そのためにカウンセリングにも通っている」等と言って、離婚をなんとしてでも回避したいと話をする方も現実にいらっしゃいました(残念ながら私の感覚では、そのように素直に自身のDVを認め、反省している人はまだ多くはありませんが)。
このようなときに、DV加害者更生プログラム、カウンセリングに取り組んでいます、ということも多く聴くようになりました。
海外では、家庭内のDV等を理由に刑事罰を受けた人が、社会復帰にあたりDV加害者のためのこうした更生プログラム等を受講することが必須条件となっているところもあるようです。このように公的な制度、仕組みとして、DV加害者が自身の問題に気づき、反省し、新しい自分に生まれ変わるためのサポートがあれば、そしてそれが真に効果的なものであるならば、加害者自身はもちろんのこと、その周囲にいる人々(被害者も含め)にとって、望ましいことに違いはありません。
日本でも、こうした加害者向けの取り組みがようやく進み始めたところかと思います。これが法的な根拠をもって制度化されれば、現在の被害者のためのDVセンターと同じように、将来的には公的な更生のための機関(相談機関等)ができる日も来るかもしれませんね。
しかしながら、現在のところ、日本ではまだこうした更生のための支援は民間(機関、人)の力にそのほとんどを頼っています。そして実際のところ、DVのサイクルや暴力性は根深く、どれほどそうした更生のためのプログラムが、加害性を緩和し、さらに消滅させることさえできるのかについては、まだまだ未知数といえるかもしれません。
とはいえ、DV被害者への保護・権利擁護の法制度をさらに充実したものにしつつ、一方でこうした加害者に対する「前向きな」取り組みが理論と実践を伴いつつ進展し、両輪となって進めば、いつの日か、DV被害の真の予防、拡大防止が可能となるかもしれません。
今回のケースのマナミさんのように、自分自身のある種の「暴力性」に気づき、なんとかしたい、配偶者との関係を再構築したいと考えることができるということは、それ自体が、とてもすばらしいことです。加害者の更生のために書かれた書籍やカウンセリング、自助グループ等、様々な方法を活用して、ご自身の弱さと向き合って行かれれば、道は開けるように思います。
〔N〕