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「うちの主人が・・」その言葉、どうですか?

webサイト・いたみん(伊丹市ポータルサイト)

「男と女の「おかしな!?」ハナシ」にコメントを寄せました。

今回のテーマは、『パートナーのこと、人前で何て呼ぶ?』です。

https://itami-city.jp/article/okashina-hanashi_itami-amagasaki-takarazuka

 

【コメント部分】

自分のパートナーのことを、他の人に対して、どう呼ぶのか、どのように表現するのか。

この一見何でもないようなことですが、たとえば「うちの主人が」と繰り返し言い続けることによって、これを聴く人に対してだけでなく、「うちの主人」と言われている当のパートナーに対しても、さらには「うちの主人」と言ってしまっている自分自身の意識にまでも、非常に大きな影響を与え続けてしまっているのではないでしょうか。

「主人」という言葉はそもそも、主従関係、上下関係の中にあって使われる言葉です。それを多くの女性たちが、結婚をしたとたんに、いとも簡単にパートナーに対して使っている様子を見聞きします。その逆、つまり男性が自分のパートナーに対して「主人」という言葉で言い表している様子を見ることはほぼ皆無であるにもかかわらずです(反対に男性たちは妻のことを「嫁」「家内」というように、家の所有物や一段下の存在であるかのように評価できる呼び方を使う様子をよく見かけます)。

なぜこのような呼び名が、こうも「普及」してしまっているのでしょうか。

これは約80年前に制度としてなくなったはずの「家制度」が綿々と人々の意識に、そして社会に生き続いてしまっているからでしょう。

いわゆる「家制度」では、「家長(家の主人)」たる男性を中心に家族員がそのもとに集い、男性が支配する側、女性たちが支配される側という構図がありました。まさに男性を「主人」と呼ぶのがふさわしい仕組みだったといえます。

その家制度がなくなってからもう何世代か時が進んでいます。それにもかかわらず、20代、30代の若い女性たちでさえ、結婚したとたんに自分のパートナーのことを「主人」と呼んでいる様子もよくみかけます。

私は仕事柄、離婚を希望する女性たちから相談を受けたり、代理人活動をすることが多いのですが、すでに別れを決断したり、離婚したくてたまらかったり、さらにいえば離婚をしてパートナーと赤の他人になった後でさえも、離婚したい相手である配偶者や、離婚した元の配偶者の男性を「うちの主人が」と呼んでいる場面を本当に良く見聞きするのです。これは本当に不思議なことです。無意識のうちに女性たちが男性を「主人」「上の人」と見てしまっている、評価してしまっているがゆえなのでしょうか。仮にそのように思っていなくてもそうした言葉を使ってしまうことによって、自然に自分自身が、相手を格上の存在、自分がそれよりも下の存在という意識を持ってしまうでしょうし、配偶者にも自然のうちに「自分は上の存在だ」と意識させてしまうかもしれません(それが、支配の構造が見られる家庭内のDV(ドメスティックバイオレンスの温床にもなりかねません)。また社会や組織の中でも、こうした呼び方が、「男性が上、女性が下」を当たり前ととらえてしまう人々の意識の醸成、維持に結びつく結果となってしまっていないかと感じます。

私自身はパートナーとは対等な関係であるべきと考えていましたから、「主人」等と呼ぼうとは思ったことがありませんし(私たち夫婦の場合は別氏を実践するための事実婚ですので、お互いに相手の苗字を使って呼んでいます。たとえばパートナーは私のことを他人に対し「中村(なかむら)は・・」と呼んでいます。苗字でパートナーを呼ぶって、意外に便利だと思われませんか?)、たとえば相談者さんに語り掛けるときにも、意識的に「夫さんは・・・ですか?」「パートナーさんは?」といった表現を使うようにしています。

この80年もの長い年月の間、多くの人が無意識のうちに「主人」という言葉を使い続けてしまった結果、現在も残るジェンダー不平等の社会構造、夫婦間の力の不均衡・権力関係につながってしまった、と言っても過言ではないくらいです。やはり、私たち一人ひとりが、自分から、そして自分の周りから、「主人」という言葉を意識的に排していかなければ、自分も、家族も、そして社会・組織も、家父長的な考え方、男性支配的なジェンダー不平等からいつまでも脱却することはできないのではないでしょうか。

そして、私たちは自分自身が人生の主人公なのです。自分の「主人」は、他でもない自分自身なのだということに改めて心に留めたいと思います。普段の生活の中で、御自身のパートナーを示す言葉として「主人」という言葉を思わず使いそうになったとき、このことを即座に思い出してみられてはどうでしょうか。

少なくとも、なんとなく呼びやすいから、聞こえが良さそうだからという理由だけで「主人」という言葉を使うことを、明日からは止めてみませんか(そして「嫁」や「家内」という言葉ももちろん同じです)。

意識高い系なんて言われてもいい!御自分のパートナーについて、対等な関係を示す言葉で呼びかけてみませんか。 (以上)

〔N〕

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